美術の歴史 2004年度
キリスト教美術 新約聖書編(その3)
【科目の系列】 広域科目
【年次】2年次 【学期】通年 【単位】4単位
【講義の目的】
この講義では、絵画・彫刻・建築といった造形藝術を単に編年的羅列として並べるのではなく、人間の歴史の中でいかなる文化的背景の下に制作されてきたかに関心を向けて講述する。いわゆる美術鑑賞は、しばしば観光旅行・ツアーの目玉のひとつとされているが、ただ漫然と絵や彫刻を眺めながらその前を通過していくだけでは意義は半減する。そこに描かれているものが何であり、いかなる意義を持つものなのか、あらかじめ知っているのといないのとでは非常に大きな差があることは言うまでもない。
今年度はヨーロッパ美術の中から、新約聖書の物語を基にして描かれた絵画・彫刻等の作品を取り上げ、これらの藝術作品とキリスト教との関係を講述する。また、今年度は特に、キリスト教二千余年の歴史の中で形成されてきたマリア信仰・聖人信仰や、西欧人の生活を作ってきた諸制度についても視野を広げて考えていくことにする。講義では適宜スライド・ヴィデオ・DVD等を用い、視聴覚を駆使して理解を深めたい。
【受講に当たっての留意事項】
講義の中で、受講生諸君に各自の見解を記述してもらう機会を設けることもあるので、出席を怠らないように。また受講生諸君には各自で美術館、博物館等に赴いて、実際の作品を数多く見るように希望する。
【教科書】
山形孝夫、山形美加 『図説 聖書物語 新約篇』 ふくろうの本、河出書房新社、2002
他に必要な資料があれば、講義中に配布する。
【参考書】
講義中に適宜紹介する。
講義中に紹介した参考書等(紹介順)
『聖書』口語訳、日本聖書協会、1954
『聖書』新共同訳、日本聖書協会、1987
中森義宗 『キリスト教シンボル図典』 東信堂、1993
ジェイムズ・ホール 『西洋美術解読事典』 河出書房新社、1988
ヤコブス・デ・ウォラギネ 『黄金伝説』全4巻 人文書院、1979-1987
アレキシス・カレル 『人間 この未知なるもの』 三笠書房、1986
藤岡通夫 他 『建築史』 市ヶ谷出版社、1967
酒井 健 『ゴシックとは何か: 大聖堂の精神史』 講談社現代新書 1487、2000
熊倉洋介 他 『西洋建築様式史』 美術出版社、1995
田川建三 『イエスという男』 第2版、作品社、2004
河谷龍彦 『図説 イエス・キリスト: 聖地の風を聞く』 河出書房新社、2000
視覚デザイン研究所 編 『マリアのウインク: 聖書の名シーン集』 視覚デザイン研究所、1995
阿刀田 高 『旧約聖書を知っていますか』 新潮文庫、1994
阿刀田 高 『新約聖書を知っていますか』 新潮文庫、1996
土井健司 『キリスト教を問いなおす』 ちくま新書 425、2003
【成績評価の方法】
下記のように、講義期間中に課す3つのレポート、及び学年末試験の成績によって評価する。課題(i)〜(iv)をすべて完了していなければ単位は認定しない。なお、これに出席状況を考慮に入れることもある。
(i) レポート(1) (4月下旬に論題を指示、5月末までに提出)
(ii) レポート(2) (7月上旬に論題を指示、10月夏休み明けに提出)
(iii) レポート(3) (11月中旬に論題を指示、12月中旬までに提出)
(iv) 学年末試験 (1月下旬に予定)
評点は、レポート(1)〜(3)を合わせて全体の50%、学年末試験を全体の50%とし、合計で60%以上の得点をもって合格とする。
【講義計画】
【第1回】
美術の見方について
「美術を見る」とはどういうことだろうか。漫然とした美術鑑賞に陥らずに作品を見ていくのには、どのような方法・態度があり得るのかを講述する。
【第2回】
キリスト教美術を見る鍵
ヨーロッパ美術の原点であるキリスト教美術は、ちょっとしたコツが分かれば抜群に面白くなる。その鍵となるいくつかの約束事について講述する。
【第3〜5回】
天使の告知
「受胎告知」「御訪問」等、聖母マリアをめぐる画題と、その元となったマリア信仰について講述する。
【第6〜8回】
イエスの誕生
「御降誕」「東方三博士の礼拝」「神殿奉献」などの、いわゆるクリスマス物語の絵画と、キリスト教文化圏における「クリスマス」の意味について講述する。
【第9〜10回】
バプテスマのヨハネの登場
洗礼者ヨハネによるイエスの受洗から、荒野での誘惑を経てイエスが宣教生活に入るまでの絵画について講述する。
【第11〜12回】
神の国運動の開始
イエスが弟子達を召命し、宣教のために諸国を遍歴する過程を描いた絵画について講述する。
【第13〜14回】
神の国運動の展開
「山上の垂訓」や敵対勢力との論争を描いた絵画を取り上げる。また、新約聖書に記される「福音」について考究し、キリスト教と他宗教(とりわけユダヤ教、イスラム教)との差異について講述する。
【第15〜16回】
遍歴のカリスマ
「カナの婚礼」「盲人の治癒」など、イエスの奇蹟を扱った絵画を取り上げ、宗教的な「奇蹟」と「癒し」の意味について講述する。
【第17〜19回】
受難物語:最後の一週間
「エルサレム入城」から「最後の晩餐」「磔刑」までの絵画を取り上げ、「十字架」というキリスト教特有の文化について講述する。
【第20〜21回】
復活の証人と神の国運動の行方
「復活」「昇天」「聖霊降臨」と、使徒たち(とりわけペテロとパウロ)による宣教活動を描いた絵画について講述する。
【第22回】
教会の成立: その後のキリスト教美術の展開
ローマ帝国の下での迫害から4世紀の公認・国教化に至って教義の整備・制定がなされるまで、またその後の教会史を概観し、西欧における宗教と藝術との関係について講述する。
【第23〜25回】
聖人信仰と聖画像
キリスト教藝術には、聖書に登場しない人物や聖書以後の人物・出来事が描かれることがしばしばである。ここでは、いわゆる聖人を描いた絵画について取り上げて、キリスト教文化圏における聖人信仰というものの特質を考究し、これらの絵画を用いることの意味について講述する。
【第26回】
まとめ