音楽文化論 2007年度 (水2前期)
20世紀ポピュラー音楽史
【科目の系列】 専門科目(展開)
【年次】2年次 【学期】前期 【単位】2単位
【講義の目的】
古今東西の音楽について、さまざまな問題を取り上げ、専門的な議論にも立ち入って講述する。 今年度は、1900年前後から顕在化した「商業音楽」「大衆音楽(ポピュラー・ミュージック)」という流れについて、世界各地の音楽の特質を概観し、この100年余のあいだ、世界の人々がどのような音楽を嗜好してきたか、人々の心に訴えかける音楽とはどのようなものなのかについて考える。併せて21世紀の音楽の未来像についても考察する。
【講義計画】(クリックするとそれぞれの詳細へ)
第1部 ポピュラー音楽の源泉
4月11日 【第1回】 アメリカの初期ポピュラー音楽
4月18日 【第2回】 キューバ・カリブ海地域のポピュラー音楽
4月25日 【第3回】 ブラジル・南米大陸のポピュラー音楽
5月 9日 【第4回】 ハワイ・インドネシアのポピュラー音楽
5月16日 【第5回】 ヨーロッパ大陸のポピュラー音楽
第2部 西洋近代音楽とのせめぎ合い
5月23日 【第6回】 ジャズの発展
5月30日 【第7回】 アメリカ大衆音楽の転換
6月 6日 【第8回】 イギリスのポピュラー音楽
6月13日 【第9回】 アフリカ大陸のポピュラー音楽
第3部 現代ポピュラー音楽の諸相
6月20日 【第10回】 ロック以後のアメリカ大衆音楽
6月27日 【第11回】 日本のポピュラー音楽
7月 4日 【第12回】 アジアのポピュラー音楽
7月11日 【第13回】 1990年代以後のポピュラー音楽
【第1回】 アメリカの初期ポピュラー音楽
商業音楽としての「ポピュラー音楽」がはじまる19世紀後半アメリカの音楽事情を概観し、奴隷解放と共に誕生したブルースという音楽について、まずはブルースの詩に歌われる内容に着目して講述する(和声法などの音楽的な特質については、第6回講義にて扱う)。また、初期のジャズについても言及し、これらが20世紀のさまざまな音楽ジャンルに与えた影響について概観する。
〈参考図書〉
中村とうよう 『ポピュラー音楽の世紀』 岩波新書、1999
フォスター作曲 《懐かしきケンタッキーのわが家 My Old Kentuckey Home》 コリーヌ・モーガン(歌)1909年録音、"American Music in the Beginning" Rice Records, 2005
ロバート・ジョンソン "I Believe I'll Dust My Broom" 1936年録音 Columbia, 1997
B.B.キング "Rock Me Baby" 1961年録音 P-Vine Records, 1999
【第2回】 キューバ・カリブ海地域のポピュラー音楽
ポピュラー音楽は、一見アメリカ主導で行われてきたように見受けられるが、音楽の流行の源泉は実は異なるところにある。今回は、キューバの大衆音楽がヨーロッパ諸国との関係の中から生まれて広まっていく過程を講じ、次いで後のカリブ海地域における音楽の発展について講じる。(ソン、マンボ、サルサ)
〈参考図書〉
八木啓代、吉田憲司 『キューバ音楽』 青土社、2001
(前回の続き)
ルイ・アームストロング Louis Armstrong. 《素晴らしき世界 What a Wonderful World》 他
ルイ・アームストロング・アンド・ザ・ホット・ファイヴ Louis Armstrong : The Hot Five. 《ウエスト・エンド・ブルース West End Blues》 1928年録音、Sony Music Entertainment, 2003
(キューバ音楽)
セバスティアン・イラディエール Sebastian Yradier作曲 《ラ・パローマ La Paloma》 スーザ楽団 1910年発表、"American Music in the Beginning" Rice Records, 2005
アルセニオ・ロドリゲス Arsenio Rodriguez 《エル・パーロ・ティエネ・クルヘイ El Palo Tiene Curujey》 1943年頃、「アルセニオ・ロドリゲス: ソン=モントゥーノの王様」 Office Sambinha, 2002
ペレス・プラード楽団 Perez Prado 《マンボ No.5》 1948年作曲、「マンボの王様: ペレス・プラード楽団」 ビクター・エンタテインメント, 2005
ヘルマン・クラル監督 映画『ムジカ・クバーナ』より (歌)ピオ・レイバ他
【第3回】 ブラジル・南米大陸のポピュラー音楽
ブラジルでもまた、異人種間の多様な衝突から新しい文化が生まれていた。リオ・デ・ジャネイロのカーニヴァルで歌い踊られることで世界的に有名なサンバも、そうした融合音楽のひとつである。講義では、20世紀初めにショーロという音楽形態からサンバが生まれてきた過程を見た上で、1950年代後半から始まったボサノバというジャンルとの音楽的な連関について講じる。(ショーロ、サンバ、ボサノバ)
また、アルゼンチンのタンゴにも言及する。(時間の都合で第4回講義冒頭に)
(前回の復習 キューバ音楽)
セステート・アバネーロ Sexteto Habanero 《ベレーンの丘 Loma de Belen》 1925年、
「キューバ音楽の真実」 Office Sambinha, 2003
(ブラジル音楽)
シキーニャ・ゴンザーガ Chiquinha Gonzaga 《この情熱 Pudesse Esta Paixao》 1913年、「シキーニャ・ゴンザーガ:神話時代のショーロ」 Revivendo Musicas Comercio de Discos, Office Sambinha, 2005
小野リサ 《ショーロの輪 Roda de Choro》 BMG Victor, 1991
ベイジャ・フロール Beija-Flor "Pocos de Caldas" in "Sambas de Enredo 2006" Gravadora Escola de Samba, 2005
ジョアン・ジルベルト Joao Gilberto 《想いあふれて Chega de Saudade》1958年 「ジョアン・ジルベルトの伝説」東芝EMI、1993
ジョアン・ジルベルト Joao Gilberto 《イパネマの娘 Garota de Ipanema》 in "Getz/Gilberto" Verve, 1964
【第4回】 アジア・太平洋地域のポピュラー音楽
ブラジルにおける状況と同様、かつてポルトガル人や、ポルトガル文化の影響を受けた諸民族が植民・移民した地域では、それぞれ独自の融合音楽文化が育ち、現在に至るまでその影響を及ぼし続けている。講義では、ハワイとインドネシアにおける伝統音楽とポルトガル人が伝えた西洋音楽の出会いについて講じ、そこから生じた様々な音楽様式について学ぶ。(ハワイアン、クロンチョン、ダンドゥット)
〈参考図書〉
田中勝則 『インドネシア音楽の本』 北沢図書出版、1996
内崎以佐美 『ハワイ音楽』 大阪大学出版会, 2007 (読みたい人は加藤研まで)
(前回の続き アルゼンチン・タンゴ)
カルロス・ガールデル Carlos Gardel 《カミニート Caminito》 in "The Very Best of Carlos Gardel" Disconforme, 2000
(ハワイ音楽)
ハル・アロマ Hal Aloma(スティール・ギター)《島の歌 Na Lei O Hawaii》in "A Musical Portrait of Hawaii" Sony Music, 1953
ソニー・リム Sony Lim(スラック・キー・ギター) 《ホクウラ Hoku'ula》 in "Slack Key Guitar: The Artistry of Sonny Lim" Palm Records, 2005
デニス・パヴァオ Dennis Pavao(歌) 《アロハ・オエ Aloha 'Oe》in "Sweet Leilani" Pilialoha Productions
(インドネシア音楽)
Keroncong Abadi Dalam Biola(器楽演奏) 《ブンガワン・ソロ Bengawan Solo》 in "Windows of Indonasian Music" Gema Nada Pertiwi, 2004
Sukardi(歌)《ブンガワン・ソロ Bengawan Solo》 in "Keroncong Asti: Parade Bintang Keroncong" Gema Nada Pertiwi, 2004
【第5回】 ヨーロッパ大陸のポピュラー音楽
ビートルズ The Beatles(活動1960-1970)が登場する以前のヨーロッパ・ポピュラー音楽を概観すると、主としてフランス、スペイン、ポルトガル、イタリア、ギリシアといった地中海世界での発展が顕著である。講義では、ヨーロッパという伝統と文化に培われて出来上がった大衆音楽の特質について講述する。(ファド、シャンソン)
(ファド)
アマリア・ロドリゲス Amalia Rodriges(歌) 《ポルトガルの家 Uma Casa Portuguesa》 《暗いはしけ Barco Negro》1956年録音 in "Amaria Rodrigues in Olymptia Theatre", Moniter Record
ジョアンナ・アメンドエイラ Joana Amendoeira(歌) 《暗いはしけ Barco Negro》 in "Ao Vivo em Lisboa: Joana Amendoeira" Companhia Nacional de Musica, 2005
(シャンソン)
エディト・ピアフ Edith Piaf(歌) 《アコーディオン弾き L'accordioniste》 《薔薇色の人生 La Vie en Rose》他 DVD「エディット・ピアフ シャンソンの誕生」 エプコット, 2003
エディト・ピアフ Edith Piaf(歌) 《薔薇色の人生 La Vie en Rose》 in "Edith Piaf: 30e Anniversaire" EMI France, 1993
【第6回】 ジャズの発展
20世紀の西洋音楽でもっとも先鋭的な発展を見せたジャンルは、クラシックよりもむしろジャズであると言えよう。いわゆる「ジャズ」は、1930年代はダンスミュージックとしての位置づけであったが、1940年代から西洋近代の機能和声の方法を極限まで追究することによって達成され、その後、衰退していった。講義では、まず和声法の初歩を説明し、その後、ブルースジャズの曲を例に、1940年代から50年代にかけて行われたビバップジャズの方法論について講じる。(スイングジャズ、ビバップ、ブルースジャズ)
〈参考図書〉
菊地成孔、大谷能生 『東京大学のアルバート・アイラー: 東大ジャズ講義録・歴史編』 メディア総合研究所、2005
菊地成孔、大谷能生 『東京大学のアルバート・アイラー: 東大ジャズ講義録・キーワード編』 メディア総合研究所、2006
菊地成孔、大谷能生 『憂鬱と官能を教えた学校: バークリー・メソッドによって俯瞰される20世紀商業音楽史』 河出書房新社、2004
グレン・ミラー Glenn Miller 《ムーンライト・セレナーデ Moonlight Serenade》他 1939年録音 「ベスト・オブ・グレン・ミラー」 BMGファンハウス, 2002
チャーリー・パーカー Charlie Parker(アルト・サックス) 《コンファメーション Confirmation》1957年 in "Charlie Parker: Now's the Time" Verve Records
ソニー・クラーク Sonny Clark 《クール・ストラッティン Cool Struttin'》 1958年 Blue Note, 1987
【第7回】アメリカ大衆音楽の転換
(前回の続き)調整音楽の可能性を徹底的に追究した形のジャズは、しかし、50年代末には行き詰まりを見せる。これを打開する試みのひとつとして、1959年に作られたマイルス・ディヴィスのアルバム「カインド・オブ・ブルー」は、コード(調性)の代わりにモード(旋法)を用いた新しい音楽であった。講義では、モードジャズの例として、ドリア旋法を用いた《ソー・ホワット》を取りあげて、モードの方法について講述する。(モードジャズ)
また、1950年代から60年代にかけて、アメリカの音楽嗜好は「黒人的」な音楽に向かって行ったと言うことができよう。その結果、白人系の若者はロックンロールと呼ばれる新しい音楽に傾倒することになる。しかし、そこには白人が「黒人的」な要素をいかに再現するかという問題が常に存在した。講義ではこの問題に着目しながら、エルヴィス・プレスリーの音楽を考察する。(ロック)
ロバート・ジョンソン "I Believe I'll Dust My Broom" 1936年録音 Columbia, 1997
ソニー・クラーク Sonny Clark 《クール・ストラッティン Cool Struttin'》 1958年 Blue Note, 1987
チャーリー・パーカー Charlie Parker(アルト・サックス) 《コンファメーション Confirmation》 in "Charlie Parker: Now's the Time" Verve Records, 1957
ジョン・コルトレーン John Coltrane(テナー・サックス) 《ジャイアント・ステップス Giant Steps》1959年録音 in "John Coltrane: Giant Steps" Atlantic, 1960
マイルス・ディヴィス Miles Davis(トランペット) 《ソー・ホワット So What》 1959年演奏 in "Kind of Blue" Columbia
エルヴィス・プレスリー Elvis Presley(歌) 《ハートブレイク・ホテル Heartbreak Hotel》 1956年 in "Elvis 30 #1 Hits" BMG, 2002
エルヴィス・プレスリー Elvis Presley(歌) 《冷たくしないで Don't Be Cruel》 1956年 in "Elvis 30 #1 Hits" BMG, 2002
【第8回】 イギリスのポピュラー音楽:60年代のイギリスとアメリカの諸相
イギリスでポピュラー音楽が本格的な形で始まったのはビートルズ以降であると言えよう。しかし、ビートルズの音楽は1960年代のリバプールに突如として現れたのではなく、ブルース以来のアメリカ黒人音楽の語法と、ヨーロッパ伝統の音楽語法とが一体となって生じたものである。講義では、ビートルズの初期作品を例にとり、そこからブルース的な要素を抽出して、当時の音楽シーンに与えた影響と、その意味について考察する。(ビートルズ、ローリング・ストーンズ)
一方、アメリカでは、大学生や若いインテリ層を中心としてフォーク・ミュージックが好まれもした。ボブ・ディラン等を旗頭とするフォークの動きが盛んであったが、ディラン自身はその後ほどなくしてロックを歌うようになる。講義では、歌によるメッセージ伝達の可能性と限界について考える。(フォーク、フォークロック)
また、黒人ミュージシャンたちは、自らの黒人としてのアイデンティティーを表す音楽の方法を見出していた。講義では、白人的な音楽と黒人的な音楽の差異に着目して、この時期の音楽の流れを講じる。(ソウル、ファンク)
ビートルズ The Beatles 《ラヴ・ミー・ドゥ Love Me Do》 1962年 in "The Beatles/ 1962-1966" 東芝EMI, 1993
ボブ・ディラン Bob Dylan(歌) 《風に吹かれて Blowin' in the Wind》 1963年 in "The Freewheelin' Bob Dylan" Sony Music Entertainment, 2003
ボブ・ディラン Bob Dylan(歌) 《ライク・ア・ローリング・ストーン Like a Rolling Stone》 1965年 in "Highway 61 Revisited" Sony Music Entertainment, 2004
ローリング・ストーンズ The Rolling Stones 《ルート66 Route66》 in "The Rolling Stones" 1963, Abakco Records, 2002
オーティス・レディング Otis Redding(歌) 《リスペクト Respect》 1965年 in "The Very Best of Otis Redding" Atlantic, 1992
ジェームス・ブラウン James Brown(歌) 《プリーズ・プリーズ・プリーズ Please Please Please》 1956年 in "James Brown: The Best Collection" Universal International Music, 2002
ジェームス・ブラウン James Brown(歌) 《セックス・マシーン Get Up, I Feel Like Being a Sex Machine》 1970年 in "James Brown The Best Collection" Universal International Music, 2002
【第9回】 アフリカ大陸のポピュラー音楽
(前回の続き)アメリカの黒人音楽は、「西洋音楽」が嫌った「反復」を、メロディー、リズム、和声のいずれにおいても、むしろ好んで採り入れるようになった。それは、1960年代前後から黒人が黒人本来の音楽的嗜好に目覚め、それを堂々と表現するようになり、また聞き手の側にも、それを受け入れるだけの成熟が見られるようになったためである。しかし他方で、和声的なハモりと耳に心地よい甘美な声使いを特徴とする、「白人的な」黒人音楽も登場し、音楽シーンで多大な人気を博した。こうした相反する側面を持つ黒人音楽のあり方を考察する。(ソウル、ファンク、モータウン)
(アフリカ大陸)アフリカは長く奴隷貿易の犠牲となって、独自のアイデンティティーを備えたポピュラー音楽が根付きにくい状況にあった。1960年代、各地で独立の機運が高まると共に、民族の根幹をふまえた音楽が生まれるようになった。講義では、現代のアフリカ・ポピュラー音楽界で、世界的に活躍しているアーティストを中心に紹介する。(エレクトリック・アフリカン他)
(ソウル、ファンク)
オーティス・レディング Otis Redding(歌) 《リスペクト Respect》 1965年 in "The Very Best of Otis Redding" Atlantic, 1992
ジェームス・ブラウン James Brown(歌) 《プリーズ・プリーズ・プリーズ Please Please Please》 1956年 in "James Brown: The Best Collection" Universal International Music, 2002
ジェームス・ブラウン James Brown(歌) 《セックス・マシーン Get Up, I Feel Like Being a Sex Machine》 1970年 in "James Brown The Best Collection" Universal International Music, 2002
(モータウン)
シュープリームズ The Supremes "Where Did Our Love Go" 1964年 in "Diana Ross & The Supremes: Number 1's" Motown Records, 2004
(アフリカのポピュラー音楽)
パパ・ウェンバ Papa Wemba(コンゴ民主共和国、旧ザイール) "Bakwetu" 1988年 in "Papa Wemba" Stern's Africa, 1989
サニー・アデ Sunny Ade(ナイジェリア) "Synchro System" 1983年 in "King Sunny Ade: King of Juju" Wrasse Records, 2002
サリフ・ケイタ Salif Keita(マリ) "Wemba" 1987年 in "Soro" Stern's Africa, 1987
ユッスー・ンドゥール Youssou N'dour(セネガル) "Ob-La-Di, Ob-La-Da", "New Africa" 2000年 in "The Best of Youssou N'dour" Sony Music, 2004
アンジェリーク・キジョー Angelique Kidjo(ベナン) "Ae Ae" 2007年 in "Djin Djin" Razor & Tie, 2007
〈参考図書〉
七類誠一郎 『黒人リズム感の秘密』 郁朋社、1999 (注:この本は付属図書館には未所蔵です。読みたい人は加藤研まで。)
【第10回】 ロック以後のアメリカ大衆音楽
1970年代にジャマイカで生まれたレゲエは、アメリカのR&Bを基にしているとは言われるものの、ジャマイカ独自の音楽として発達した。またジャマイカの人々は、既存の音素材を、音響機器を駆使してアレンジし、またしゃべりの要素をも盛り込んで、まったく別種の音楽を作り出してしまった。その音楽がジャマイカ系移民を通じて海を越えて人々を感化し、イギリスではクラブ・カルチャーとして、アメリカではヒップホップとして定着して、1980年代以降、それまで白人資本が支配していたロック、ソウル、ジャズの文化を変貌させてしまった。講義では、これらの過程を概観し、こうした新種の音楽が持っている音楽的特質と、現代の音楽文化に及ぼす影響・問題を考察する。(レゲエ、ダブ、DJ、ラップ、ヒップホップ)
トゥーツ・ヒバート Toots Hibbert "Sit Right Down" in "Toots & The Maytals: Funky Kingston / In the Dark" The Island Def Jam Music Group, 2003
ボブ・マーリー Bob Marley "Time Will Tell" (Documentary) in "Legend: The Best of Bob Marley and the Wailers"(DVD) The Island Def Jam Music Group, 2002
キング・タビー King Tubby "The Bold Dub" in "King Tubby in Dub: Bring the Dub Come" Heartbeat, 2003
U−ロイ U-Roy "Gorgan Wise" in "U-Roy Meets King Tubbys" Attackcd
アフリカ・バンバータ Afrika Bambaata "Zulu Nation" Planet Rock
【第11回】 日本のポピュラー音楽
1970年代の日本の歌謡曲は、それまでの「西洋文化偏重」の中で半ば意図的に等閑視されてきた日本人の音楽的伝統を蘇らせた。これは日本の歌謡史全体を振り返ると、画期的な出来事であったと言うことができる。講義では、近代日本で用いられた様々な音階を概観しながら、70年代の歌謡曲における音楽作りの特徴と、90年代"J-POP"における欧米風音楽の特徴、さらにはこれらの方法論的な妥当性について考察する。(歌謡曲、J-POP)
〈参考図書〉
小泉文夫 『歌謡曲の構造』 平凡社ライブラリー、1996
佐藤良明 『J-POP進化論』 平凡社新書、1999
増田聡 『聴衆をつくる:音楽批評の解体文法』 青土社、2006
キャンディーズ 《春一番》 1976年 「キャンディーズ: ゴールデン・ベスト」 Sony Music House, 2002
ピンク・レディー 《ペッパー警部》 1976年 「ピンク・レディー」 Victor Entertainment, 2005
安室奈美恵 《Sweet 19 Blues》 1996年「181920: NAMIE AMURO」 Avex Trax, 1998
【第12回】 アジア・中近東・北アフリカのポピュラー音楽
アジアのポピュラー音楽は個々の国や民族の状況によって多様な発展の仕方をしてきたが、しかしそのいずれもが、各民族固有の伝統と言語(とりわけ音声)の特徴を生かした音楽を作っている。そこに通底するのは、人間の「声」の美質を最大限に生かして歌にしていこうとする意識である。講義では、東アジアから東南アジア、中央アジア、中近東、北アフリカへとわたって、それぞれに特徴的なポピュラー音楽の特質について講述する。
ケ 麗君(テレサ・テン、台湾) 《独上西楼》 1983年 「淡淡幽情」 Taurus Records, 1995
シティ・ヌルハリザ Siti Nurhaliza(マレーシア) "Siti Nurhaliza Live in Concert, Royal Albert Hall in London" Rice Record, 2006
ヌスラット・ファテー・アリ・ハーン Nusrat Fateh Ali Khan(パキスタン) "A Voice from Heaven" (DVD) Crossmedia Communications, 2001
ファイルーズ Fairuz(レバノン) "Habbeytak Bessayf" in "The Best of Fairuz" Press Hellas, 1987
サミーラ・サイード Samira Said(モロッコ) "Belsalama Belsalama" in "Aweeny Beek" Alam El Phan, 2004
【第13回】 1990年代以後のポピュラー音楽
19世紀から20世紀にかけて、世界は欧米を中心とした近代化を進めてきたが、それとは一線を画して、もしくは取り残された形で西欧文化の影響/浸食を免れていた文化圏がある。本講義では、その中からケルトの文化圏を取り上げ、80年代から90年代に起こった伝統音楽と都市型音楽との融合・再編成を考察する。
〈参考図書〉
ピーター・ファン=デル=マーヴェ 『ポピュラー音楽の基礎理論』 中村とうよう 訳、ミュージック・マガジン、1999
アルタン Altan "Eirigh 's cuir ort do chuid eadaigh" in 「ローカルグラウンド Local Ground」 プランクトン, 2005
エンヤ Enya "Less Than a Pearl" in 「アマランタイン Amarantine」 Warner Music, 2005
エンヤ Enya "Na Laetha Geal M'oige" (インタビュー付き) in 「The Celts 幻の民ケルト人」(DVD) ポニー・キャニオン, 2005 (原曲は「ウォーターマーク Watermark」 Warner ,1988 所収)
【受講に当たっての留意事項】
講義時数3分の1を超えて欠席した者には、期末試験の受験資格を認めないので注意すること。
【教科書】
特に指定せず、必要に応じてハンドアウトを使用する。
【参考書】
講義中に適宜紹介する。なお、上の記述中にある参考書は既に本学付属図書館で購入してあるので、無理に買い揃える必要はない。
【成績評価の方法】
期末試験の成績によって評価する。
1.授業評価結果の概要(課題)
【評価する点】
○ 世界のいろいろな国の音楽について知ることができた。
○ 自分が履修している中で一番興味があった。
○ 音階などの専門的な話は理解するのが難しかったが、音楽のルーツや背景が知れて興味深い授業だった。
○ 音楽や映像を使って、とても分かりやすくなるように努力していた。
○ 音楽を原点から学んで、その国の時代背景も知れて良かった。
○ 作曲に法則があるということが分かって、とても驚いた。この授業をとって良かったと思う。
【改善すべき点・コメント等】
(1) 興味深い授業だったが、音楽の専門的なことはちょっと分からなかった。
(2) 文化に興味が湧かないので、難しく感じた。
(3) 板書をもう少し詳しく、分かりやすく書いて欲しい。
(4) もう少し最近のメジャーな曲も扱って欲しい。
2.上記評価に関する教員の取り組み(授業改善策)
○ 多くの好意的な評価をいただき、感謝しています。殊に、作曲の法則(和声法)の講義は、和声の機能的な用法の説明を通して、西洋文化の根本的な発想の方式を理解するという意図でやっておりますが、その趣旨を正しく捉え、かつ啓発的な講義として受講してくれた諸君がいたという点を、非常に嬉しく思っております。
【改善点・コメント等について】
(1) 確かに、ピアノやギターなどの楽器か、あるいは合唱等といった音楽の経験がないと、「専門的な話」(=和声法や音階の講義)は少々難しいと感じたかとも思います。ただ、講義中にも述べたとおり、この箇所は、和声や音階の細かい使い方を理解することよりも、むしろそういった法則を用いずには曲を作れないという、音楽作りの上での「文化的な癖」を知ることに重点があります。 もっとも、これを受講生の皆さんに理解してもらうためには、もっと長く時間を使って、丁寧に説明をする必要があったかと反省もしております。来年度以降は、この項目について、より詳しくお話できるように、講義の内容を修正したいと思っております。
(2) 文化に興味が湧かないというのは、たいへん残念です。ひょっとしたら、「文化」とは歴史や地理の教科書をお勉強することだと思っているのではないですか? 私たち人間は、毎日、文化の中で生活しているのですぞ!
(3) 詳しい板書がないと講義について行けないとしか考えられないのは、たいへん残念です。この学校の学生諸君にはまだ、教師が指定した本を図書館で借りて読み、講義を自分でフォローアップしていくという習慣がないようです。あるいは、そもそも「教科書」に慣れすぎて、そういう発想すら浮かばないのかもしれません。講義中にたびたびその旨を指示しましたが、実行する学生は少なかったようです。来年度は教科書を使用します。
(4) 音楽の「歴史」の講義ですので、古い曲ばかり扱うことになるのは仕方がないことです。各分野で最も「メジャー」なアーティストを選び、現在の音楽シーンとの関連も一緒に紹介しましたが、自分が「知らない」音楽になかなか関心が向かない状態のままで受講しても、苦痛だったかもしれませんね。でも、そもそも世の中は自分の知らないことだらけなのですから、せめて大学にいるときぐらいは、自分が物事を「知らない」状態や「分からない」状態のときに味わう苦痛や不安に、しっかりと耐えて立ち向かう習慣を身につけてください。
(c) Motoaki Kato, 2007-2008
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